第一回レポート
鋳造プロペラの作り方
Dr.スランプ

真鍮製のぺラは鋳造という特殊な技術を使用いたしますので、一般の方は、製作できません。そのためホワイトメタルによる製作方法と平行してお話を進めさせて頂きたいと思います。遠方、地方の会員様のことも考え全ての素材が通販で用意ができる東急ハンズ(大阪心斎橋店、6階成型材担当者まで代引き可能、06-6243-311他の店舗でも揃うとは思いますが、店舗により若干品揃えが違うみたいです。)で揃う物を今回使用いたしました。また、釈迦に説法を説くようなものですが、模型制作、初心者の方も解りやすく解説したいので回りくどい表現も沢山出てくるかと思います。また私も、専門家という訳では御座いませんので、間違っている部分がありましたら、平にご容赦ください。製作につきましての事故や、怪我につきましてはあくまでも個人責任でお願い致します。私個人や、当会は一切の責任は負いませんので其処のところ宜しくご理解の上,ご了承ください。

シーウルフ級のぺラのパーツは2つの部品からなるので、まず接着しワンピースにします。接着はタミヤのプラセメントを使用しました。プラパーツには何も加工していません。ランナーから切り離した部分を綺麗に処理したぐらいです

印象(型取りをする事)をする為に基底面となるような平面滑卓な板、ここでは厚手のガラス板(プラバン、金属板等)を使用、印象材(型採りをする材料、今回はシリコーンを使用、後述)が流れ出さないような側壁を作る為のリング(空き缶、ペットボトル、塩ビ水道管等何でも良い)を準備します。

今回利用します、シリコーン印象材と離型剤を用意します。正式には低粘度縮合タイプ型取り用シリコーンゴム、メーカーは信越シリコーンのKE14です。主剤500gと硬化剤25gがセットで税込み(以下税込み価格)\1995です。これは初心者にも使いやすい素材です。主剤に硬化剤を混合するだけで室温で簡単に硬化し、ゴム弾性体になります。粘度が低い事で脱泡が容易であり、細部にも流し込みやすい。硬化したゴムは離型性に優れており、ポリエステル・ポリウレタン・エポキシ樹脂の型取りに最適です。型取り用シリコーンゴムの一般グレードの中では、ゴム強度が高いです。離型剤とはシリコーンゴムと原型の接着防止剤。原型(今回はプラモのぺラ)に塗布する事によりシリコーンゴムと接着してしまったり、硬化阻害を防ぎます。メーカーは信越シリコーンのバリヤコート6(25g入・\1050 / 100g入・\1890

ガラス板に原型ぺラと側壁リングをゼリー状瞬着(高粘度瞬間接着剤はほんの微少量で仮着等に使用する事が多い)を数滴で仮着しバリヤコートを塗布する。原型に塗装してある場合、バリヤコートがつくと塗装がとけてしまうので注意してください。側壁リングとガラス板はシリコーンゴムが流れ出さないように蝋燭の蝋などで密着しておきます、後でお湯などで洗浄できます。

シリコーンゴムを流し込みます、まず混合用容器(コンビニのホットコーヒー用厚手保温紙コップ?を使用)に主剤を必要量とり,硬化剤を混ぜ攪拌します。混合比などはセットに添付されている取り扱い説明書を熟読してください。

注意点はまず、攪拌不足は硬化不良等を起しますのでよく攪拌してください、この時出来るだけ空気を入れないように静におこないます。作業時間は25℃時で20分ありますので焦らずに作業します。手荒く早くすると気泡が埋入致します。

家庭用の肩こりバイブレーターを混合用容器の底に押し当てると脱泡できます

原型の表面に気泡が出来るのを防ぐため、攪拌したヘラ等を使って表面を塗布するような感じで少量ずつ出来るだけゆっくりとシリコーンゴムを流し込みます。ガラス板と金属リングの境目の赤色に見えるのはWaxです。

後で裏返して使用します。裏面が水平の方が後で作業がしやすいので、もう一枚ガラス板を上から押さえます、完全硬化を待ちます。25℃で24時間です。

原型ぺラの雌型が完成しました。

今回使用する、低融点合金のクラフトアロイ(66g)¥1260を用意します。このホワイトメタルは融点が150℃と低く溶解し易く、収縮が小さく精度の良い複製品ができます。またシリコーンゴム型に注型出来る合金です。強度が高くて錆びにくく、失敗しても再溶解でき、有毒な成分が含まれず安全です。少しダークな渋めの仕上がりで手磨きに最適です。厚みがある物に力をかけると割れてしまいますが、薄くするとペラのピッチ位の捻りを付加することが出来ます。

シリコーンゴム型の注型面にクラフトアロイのセットに入っている黒色に見えます剥離砂、<KSC塗型パウダー>を筆等で軽く薄く塗布します。100円ショップ等で販売しています、キッチン用品の金属性計量カップ(200℃以上の熱に耐えられる容器なら何でも良い)にクラフトアロイを適量入れバーナーやライター,電熱器やコンロ等で加熱し金属を溶解します。表面に浮いた酸化皮膜が入らないように、静かに素早く注入します。

一気に手早く雌型に注型し上から厚ガラス板(プラバン等は溶けてしまいますので金属板等が良いでしょう)を押付け、加圧し細部にまで金属を広げ入れます。注意点は、火傷はもとより、型には絶対水分、不純物等が付着しない様にしてください。

上記拡大写真

金属が完全冷却後、雌型より脱型し耐水ペーパー等を使用しバリを取り除いて原型のプラモのぺラと同じくらいの厚みにします。

これはバリを取り除き捻りを入れる前の状態。

タップでネジを切り、羽根を研磨しラジオペンチ等で捻りを入れて完成させます。

この方法を使用できれば、小さなパーツを金属に置き換えることが可能です。しかしこの金属は薄くすると強度、耐磨耗性は殆ど期待できませんが、艦の艤装パーツ等には最適です。今回はシーウルフ級はペラがシュラウドに囲まれ露出していませんので、ぺラをヒットする危険が少ないと考え使用を試みました。

付録
鋳造による真鍮プロペラの製作
 ロストワックス法

前回の雌型を使用しこれに金属ではなくワックス(蝋燭の蝋の様なもの)を溶かして注型します。

ここではピンク色のワックスを使用しています。このワックスパターンの裏面にワックスで出来たスプルーと呼ばれる溶かした金属が流れ込むための湯道を付けます。これを金属製のリングの中に耐火石膏でスプルーの端を出して埋没して硬化を待ちます。この金属リングごと炉に入れ数百度で熱するとロストワックス法の呼び名のごとく脱蝋、ワックスが全て燃え尽きペラの空隙が出来ます。この金属リングを加熱したまま遠心鋳造機に装填し、遠心鋳造機にセットされているルツボの中に金属(今回は真鍮)を入れバーナーで加熱溶解し一気にバネで巻かれた遠心鋳造機のリリースボタンを引き金属リングの中に出来た空隙に遠心力で溶解した金属を鋳込むます。真鍮の融点は900℃強、1000℃前後の溶けた金属が遠心力で飛び散る可能性も在る訳ですから歯科技工士や、彫金をしている者に任せたほうが良いでしょう。我々は挑戦はしない方が賢明です。

この写真は金属が冷えて埋没材をあらかた取り除いたところです。

ペラの後方に湯溜まりが見えている。

バリを取り研磨し、ピッチを付与した完成試作品です。

今回は会員特典として

会員の皆様だけに粗研磨後、センタータップネジM3加工済み、捻り無付加の状態、シャフト付の素材としての販売を予定しています。当方の仕事の合間に手作業で一つずつ制作しますので大量生産できません。月産4個位と思ってください。あくまでも素材ですから後はご自身で完成させてください。耐水ペーパー#400〜#1000位とラジオペンチとデザインナイフ位の工具があれば34時間で完成できるものを配布できる予定です。販売個数は当方のシリコーン雌型が持つ限りとさせて頂きます。
予価 ¥3800
公平を期すために当HPの掲示場に書き込まれた順に制作したいと思います。誰が一番に注文されるか分かりませんがその下に注文を書き込んでいってください。お一人様1点とさせてい頂きます。

追記

今後もこの様な特集を充実させて行きたいと思いますので、まだ会員の手続きが未完了の方は何卒この機会に正式に入会をお済ませ下さいますようにお願い申し上げます